白抜きと飛白
<線質の追究~ 飛白 >
その後の白抜き線追究=飛白体との関連
「書の深遠河田一臼の世界」記念誌の冒頭における田宮文平氏の寄稿文の中で次のような一節がある
『昭和26年の第4回書道芸術院展で特別賞となった「幻想(大江日夜流)」云々の六曲屏風は、飛白の手法を駆使して書線に光を体現した新感覚の書であった。この延長線上に出現するのが、昭和27年の日展特選となった「北門行」の六曲屏風である。……後略……』
ここで注目したいのは<飛白>という筆法である。専門書家でないので、飛白(又は飛白体、飛白線)についての充分な知識はありませんでした。
当初は、先般追究した『白抜き線』 (別途~「河田一臼の世界」カテゴリ・一臼先生線質に対する考察と挑戦を参照) と同様のものではないかと思いました。
しかし調べていくうちに、全く異質な線質であることが判明してきたのです。
以下、白抜き線と飛白線の違いについて追究実施した内容を報告します。
白抜き線の時と同じく、実際の運筆実施についてはA君の助けを借りております。
◆飛白体について
・起源は西暦二世紀頃の後漢時代に遡ります。匠が壁の修復で使う刷毛の技法が始まりであるといわれます。
~飛白体筆法の中国古典拓本~
1図晋祠銘題(一部) 2図昇仙太子碑(一部)
3図尉遅敬徳墓誌蓋(一部)
刷毛筆法により、天女の羽衣を想像させるさせる異様とも思える線が表現できるといいます。
・日本では空海(弘法大師)の「真言七祖像」が有名です。

4図=真言七祖像(部分) 5図=十如是(部分)
古来のこの時期に、このような線表現をした空海は正に非凡な人物であったと一臼先生は感銘されていた。
・飛白体作品=一臼先生六曲屏風
前述の通り、田宮文平氏が指摘している一臼先生六曲屏風作品における飛白(線)を確認してみよう。
6図一臼先生「幻想」(一部)
明らかな飛白(線)とはいえないが、極めて柔らかい毛筆線の中に点状のかすれと共に細い線状飛白が見られる。
7図一臼先生「北門行」(一部)「飄」「朔」
「飄」「朔」字の縦~斜め線などにおいて、繊維状の飛白が明白に認められる。
◆実際の運筆実施
・刷毛(筆)の用意……2本を準備する。
8図 刷毛筆
左は水性7㎝巾
右は油性4㎝巾
・刷毛筆を、ほぼ垂直にして運筆する。
図9空海の「漢」臨書
油性刷毛を使用する
思ったより簡単に模写ができた。繊維状の細い線も刷毛用具のせいで自然に表現可能である。
要は、紙面に対して軽いタッチを心がければよい。
次に、いろいろ表現してみる。図10-5の「真」表現に水性刷毛を使用した以外は、全て4㎝巾油性刷毛筆を使った。
図10-1「飛」 図10-2「飛」

図10-3「風」
図10-4「道」
図10-5「真」
・空海の「十如是」の異様表現を模臨?(模写&臨書)してみた。
図11-1,2
図12「是」
切れ味とかの違いによる問題はあるにせよ、空海が表現したのとほぼ類似の飛白線表現は可能である。
◆飛白~挑戦と作品
☆通常使われる羊毛筆においても飛白線を出すことは可能だと思い、前掲の一臼先生字句「朔」を手本に挑戦してみた。
図7 「朔」(再掲)

図13「朔」臨書
使用筆は下図14 左側の羊毛中筆である。かなり難しくてやっと何回目か後に、図13右端程度のものが表現できたが、充分とはいえないだろう。
図14 羊毛中筆
☆油性刷毛筆(巾4㎝)での作品
図15「国破山河在」
図16「萬里寒光」
図17「和風慶雲」
☆水性刷毛筆(巾7㎝)での作品
図18「崇礼遜」
☆羊毛大筆での作品
図19 羊毛大筆
図20「蛇」
◆ 飛白についての見解
①白抜き線の場合、筆を横倒し(紙面に水平)にして行うのに対して、飛白の場合は筆を紙面に対しほぼ垂直にし、穂先を刷毛状にして運筆するのがコツである。
刷毛そのものを使えば、極めて容易に飛白線を表現することが可能である。
②白抜き線の表現に比べて、飛白線の表現実施はそれ程難しくないと思われる。しかし速度や筆圧などを変化させることにより、極めて美しい線質を出したり、相当に異様な線質を表現することができると思われる。
③特に通常の運筆の中に、飛白や白抜きなどの技法を取り入れることにより、千変万化の複雑な運筆が表現できるであろう。
④しかし余りに運筆技法にこりすぎて、鑑賞者に不快感を与えるのも考えものである。
要は表現作品のレベルを高める技法であることを忘れてはいけない。
以上
☆★ 飛白と白抜き筆法を駆使した
<代表的作品> ★☆
「活人剣」
「松鶴延年」

